いぶすきーの映画ぶろぐ

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2011年01月25日

告白



「告白」 監督・脚本:中島哲也 原作:湊かなえ

興行収入38億円突破!公開4週連続第1位。
原作は286万部突破のベストセラーを超える大ヒット作。
はじめ、映画の製作が決定した時、天邪鬼な性格の私は「どうせ、つまらない商業映画になるだろう」と高をくくっていた。ただ、監督があの中島監督ということがわかり、さらに松たか子がインタビュー映像で監督の意気込みに動かされ、出演を決めたという逸話を聞いたので、わずかながら期待はしていた。

そんな期待を存分に裏切ってくれるほどの内容を本作は秘めていた。

おもしろい、という感想に対する表現が、果たして適切なのかどうか難しいところだ。

【ストーリー】

ある中学校、雑然とした教室。

終業式のホームルーム。1年B組、37人の13歳。

教壇に立つ担任・森口悠子が語りだす。

「私の娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」

一瞬、静寂に包まれる教室。



物語は「告白」から始まる…


そもそも原作自体が大ヒットするほどの内容なのだが、これをどう映画として仕上げるかというところに監督の腕が試される。

実際、小説とは違う描写やストーリーが存在しており、映画として伝えるべきものは追加され、適切ではない事象に関しては引き算されている。

森口が、渡辺の発明品を一貫して馬鹿にしている事に関しては、森口のキャラクターとしての立たせ方を優先させたためであろう。

あくまで悪役に徹するというか、強調する必要があったと考えてのことではないだろうか。

また、原作中にないシーンとして、ファミレスの店内で森口と北原が対面するシーンも同様だ。

これは、北原がわずからながら森口のことを信じていたという前提のもと、大人の裏切りという制裁を加えてやる必要があったためであろうか。

いずれにしても、真意は定かではないが、松たか子という国民的女優が演じるにあたって、相当に悪を強調するという徹底した演出だったのではないかとみている。

少なくとも、ラストシーンでの演技には誰しもが驚愕したであろう。

今まで観ていた、あの美しく純粋な松たか子像は一体どこへ…いい意味で、だ。

中島監督といえば、『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』など、CM制作あがりで、どちらかといえば綺麗な世界やユーモアを描くことに才のある方だったと記憶していた。

本作において、私なりの結論として、これまでのキャリアを総動員して、監督自身がこれまで感じていた鬱憤を解放した爆発的なブラックエンターテイメントであると思う。

私自身も感じるところではあるのだが、元々、CM業界で、広告という立場で映像表現をしてきた監督にとって、商品を効果的にユーザーに伝えるという仕事は、ある意味で”キレイごと”の多い世界なのではないかと思う。

本作では、長年のキャリアで、描ききれなかった人間の負の部分やどうしようもない濁った世界を描き切っている。

今までのコミカルな要素や派手な美術・衣装を使った画作りは無く、少年犯罪を題材としていることもあり、映像世界はダークな青みを帯びた色合いが一貫している。

開始数分、真っ暗なシーンに始まり、内容もわからぬまま、松たか子が淡々とした口調で言葉の断片を繰り出すところから始まる。

この時点で、すでに観客は作品に没入しなければ、いい意味で話が理解できないという状況に陥いってしまう。

そこから、少しずつ話の骨格が形成され、徐々に鋭利のあるエピソードが登場していく。

完璧ともいえる、その巧みな脚本・構成で仕上げる辺り、プロフェッショナルの技を感じる。

また、映像表現も素晴らしく、まるでアート系のフィルムを観ているかのような教室のシーンや学校生活の描写も美しい。

中学生による残酷な殺人・いじめ描写等が含まれるため、映倫により、R15+指定を受けた。

だが、生徒役の一部には、15歳未満の俳優・女優もいる。この辺りの矛盾も含めて、本作は問題作として興味深い。

少年法に守られているという自意識のもと、法を犯す少年に対して、大人が悪魔の復讐を実行する。

客観的に観ることができれば、それこそエンターテイメントとして楽しんでいただけるかもしれないが、どうだろうか。

私はつい深く考えさせられてしまい、しばらくの間、絶望的でどうしようもない気持ちになってしまった。

ぜひ、時間に余裕のある時や、ちょっとだけダークな世界に浸りたい時に観ることをおすすめする。

Posted by いぶすきー at 01:15 映画コメント(2)
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【自己紹介】はじめまして、いぶすきー(指宿)といいます。神戸で、WEB関係の会社でディレクター兼カメラマンとして働いています。愛知県、三重県、富山県、京都、神戸と各地を転々としています。

【趣味】映画・漫画・アニメ・読書・旅行です。
自転車で北海道から富士山を縦断したことがあります。

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